くじらのしっぽのいま

お話:社会福祉法人 石巻祥心会 障害福祉サービス事業所 くじらのしっぽ
利用者 小川絢子さん(女性/当時29歳・知的障害)
管理者 阿部かよ子さん 職員:多田剛優さん
グループホーム くじらのしっぽ ひまわり 生活支援員 阿部安子さん

震災から8年経ったいま(取材は2019年2月)、管理者の阿部かよ子さんにくじらのしっぽの現在について伺いました。

阿部施設長

阿部かよ子さん

 

くじらのしっぽでは今、どのような作業をされているのでしょうか?

清優館(※1)の清掃や授産品作り、そして現在力を入れているのが、金華塩と呼ばれる天然塩作りですね。地域の皆さまの力を借りて作り上げた製品なので、来年度はもっと発展させたいと思っています。

 

金華塩作りは震災前から行われていたのでしょうか?

震災前から作ってはいたのですが、コストの面で折り合いがつかず一旦作るのをやめていたんです。しかし、震災で何も作るものがなくなった時、もう一度塩を作ろうということになったんです。釜作りなど準備を一から始めたのですが、燃料や海水の調達方法など数々の問題が発生しました。そこで、地元の製材所や漁業協同組合の方に相談したところ、私たちの塩作りを通して地元を活性化したいとの思いに共感して下さり、ご協力をいただけることになったんです。

 

震災の前と後で利用者さんに変化はありましたか?

もともと利用者さんは前向きな方が多く、職員の方が勇気づけられたり、勉強させられたりしていたのですが、震災を経験する事で逆境に負けないぞという気迫のようなものが芽生え、大きな力になっているような気がします。

 

利用者さんは精力的に活動されているようですが、モチベーションになっているのは何だと思いますか?

現実的な話になりますが、やはりお給料ですね。封筒で手渡されるお給料が彼らのモチベーションになっていると思います。以前はお給料の使い方もあまり計画的ではなかったのですが、現在は野球や映画を観るために貯金していたりと計画的になっています。どう使うかを考えるのが楽しいみたいですね。

 

くじらのしっぽの今後の課題や目標を教えてください。

震源地が目の前ということもあり、私たちの経験を発信していきたいと思っています。くじらのしっぽとしては、牡鹿半島唯一の障害者福祉事業所でもあるので、利用者さんが安心して働き、楽しく過ごせる事業所を目指したいと思っています。その結果、地域産業の担い手になれればと思っています。

 

いま必要なものは何ですか?

ここは石巻市の中心部まで1時間かかるような地理的制約のある地なので、流通の部分で不便を感じることがあります。その問題をクリアできれば、販売促進や商品の開発につながるのではと思っています。

 

ホームページを活用して受注につなげていらっしゃるようですが、今後も力を入れていくのですか?

これは本当に大きな存在で、ホームページを通して定期的に商品を購入して下さる方がいらっしゃいます。お顔は分からないのですが、お電話をいただく度に昔からの知り合いのようにお話をして下さいます。特に「塩蔵わかめ」を気に入っていただいているので、絶対に切らせないし、商品に嘘があってはいけないと思っています。

 

全国のみなさんにアピールしたい事はありますか?

震災から8年が経過しましたが(※2)、いま一番怖いのが震災記憶の風化です。障害をお持ちの方たちが震災で不安な日々を過ごしたのは間違いありません。この震災の記憶を風化させないで欲しいのが一番の願いです。

 

くじらのしっぽの皆さん 

※1:くじらのしっぽは保険福祉センター清優館の中にあります。

※2:取材日は2019年2月。

 

 

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