意識の変化

お話:社会福祉法人洗心会 ワークショップひまわり 支援係長 伊藤純子さん

震災前は地震に対する備えはしていたのでしょうか?

特別な備えはありませんでした。防災グッズはローソクと懐中電灯だけでした。震災後はラジオを準備しました。車のラジオは携帯できないので、携帯ラジオと電池、それと利用者さんの電話番号など連絡先が分かるリストを各送迎車に積みました。それと携帯電話の充電器ですね。

 

震災の前と後では心境的変化はありましたか?

利用者さんのご家族はあったと思います。一瞬にして奪われる命を目の当たりにし、自分がいなくなったらこの子はどうなるんだろう?と具体的に考えるようになったようです。兄弟でもいればいいんですが、必ずしも皆そうではない。そうなったときに誰が面倒を見るのだろう?と。ですので、子供名義の貯金をされる方だったり、区分認定を貰って入所施設に入れるようにと、いまから短期入所の訓練をされる方だったり。とにかく自分がいなくなった時の事を現実的に考えるようになったようです。

 

最後に健常の方々に知ってほしいこと、訴えたいことはありますか?

いま、ひまわりではパンやクッキーを作ってますが、これは人と繋がる為のツールだと思っているんです。物を売ることで声をかける、障害を持ったひまわりの子たちが笑顔で配達をする、それを見て障害を持っていてもこんなに明るく笑えるんだということを知っていただく。職員も家族もだれもいなくなった時、一度でも顔を見た方ってSOSを出しやすいと思うんですよ。知っている方を増やしていく。障害を持っていてもこの気仙沼という地域で暮らしていく基盤を作ってあげたい。それが甘い香りのするクッキーだったり、香ばしい香りのするパンだったり。そうやって美味しいものを通していろんな人とつながっていく。金銭だけでなく自分がこれから生きていく、そういう輪を広げてくれたらなと思っています。今では気仙沼市内の企業さんであったりとか、行政機関であったりとか、17か所に訪問させていただいてます。そこで、ダウン症って何?自閉症って何?ということ以前に、ひまわりの利用者さんはいつも笑っているよね、楽しそうだよねって存在を知っていただく。私はそういった活動を通して障害に対する偏見を取り除いてあげたいと思っています。こんなにも屈託なく一生懸命頑張っているんですよ、笑っているんですよってたくさんの人に知っていただくためのツールがクッキーやパンなんだと思っています。ひとりでは絶対に生きていけない方々、でも誰かの手助けが少しでもあれば輝けるんですよ。笑えるんですよ。知らないと掛けられない声も知っていれば掛けられる。

 

コミュニケーションが大事で、それが防災にもつながっていきますよね。

私は防災にはそれが一番大事だと思います。ろうそくや電気も大事ですが、人に助けてと言えること、それと何があっても安心して集まれる場所がある、それが一番防災に繋がると思います。

 

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