いま

織音のいま

震災から8年が経過した今(取材日は2019年2月)、再び織音の熊井施設長を訪ね、現在の織音の活動について取材しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、織音ではどのような作業をされているのですか?

利用者さんは「さをり織り」の生地を織っています。職員はその生地を製品化し、販売しています。また、委託作業として内職作業も行っています。

 

さをり織りの製品作りは震災前から行っていたのでしょうか?

そうです。震災前は地域活動センターとして活動していたのですが、その時は自分たちが身に着けるために作っていました。趣味的に製作しながら販売もするといった形です。震災後は販売を念頭に置いた製品作りを行ってきました。

 

販売は震災後から力を入れ始めたのですね。

そうですね。支援という形で購入して下さる方がいらっしゃったので。その売上は工賃になりますので、避難生活をしていた利用者さんにとっては大きな励みになりました。

 

震災後、利用者さんに何か変化はありましたか?

お客様が来ても積極的に関われるようになりました。恥ずかしがりやだった方が一歩前に出れるようになったことが嬉しかったです。しかし、震災直後は事業所の再開も危ぶまれており、利用者さんは自身が置かれている状況をきちっと理解できず、大きな不安を抱えていたと思います。

 

震災から8年が経ちますが、利用者さんの不安はどの程度解消されたと思いますか?

生活は元の水準になりつつありますし、ある程度は解消されたと思います。しかし、まだ問題もあります。あるご家庭では利用者さんの面倒を祖父、祖母が見ていたのですが、体力的な問題からそれが難しくなりお母さんが仕事を辞めざるを得なくなりました。震災の影響もあったのかも知れませんが、そこを汲み取れなかったことに責任を感じています。

 

織音の今後の課題や目標を教えてください。

今まで利用者さんの工賃向上のために頑張って製品を作り、販売してきましたが、最近では工賃よりも事業所で楽しむ時間を重要視する方が増えてきました。織音の在り方を考える時期に来たのかなと思います。今後の織音の方向性を利用者さんと親御さん、職員全員でじっくり考えていきたいですね。

 

ありがとうございました。

 

くじらのしっぽのいま

震災から8年経ったいま(取材は2019年2月)、管理者の阿部かよ子さんにくじらのしっぽの現在について伺いました。

阿部施設長

阿部かよ子さん

 

くじらのしっぽでは今、どのような作業をされているのでしょうか?

清優館(※1)の清掃や授産品作り、そして現在力を入れているのが、金華塩と呼ばれる天然塩作りですね。地域の皆さまの力を借りて作り上げた製品なので、来年度はもっと発展させたいと思っています。

 

金華塩作りは震災前から行われていたのでしょうか?

震災前から作ってはいたのですが、コストの面で折り合いがつかず一旦作るのをやめていたんです。しかし、震災で何も作るものがなくなった時、もう一度塩を作ろうということになったんです。釜作りなど準備を一から始めたのですが、燃料や海水の調達方法など数々の問題が発生しました。そこで、地元の製材所や漁業協同組合の方に相談したところ、私たちの塩作りを通して地元を活性化したいとの思いに共感して下さり、ご協力をいただけることになったんです。

 

震災の前と後で利用者さんに変化はありましたか?

もともと利用者さんは前向きな方が多く、職員の方が勇気づけられたり、勉強させられたりしていたのですが、震災を経験する事で逆境に負けないぞという気迫のようなものが芽生え、大きな力になっているような気がします。

 

利用者さんは精力的に活動されているようですが、モチベーションになっているのは何だと思いますか?

現実的な話になりますが、やはりお給料ですね。封筒で手渡されるお給料が彼らのモチベーションになっていると思います。以前はお給料の使い方もあまり計画的ではなかったのですが、現在は野球や映画を観るために貯金していたりと計画的になっています。どう使うかを考えるのが楽しいみたいですね。

 

くじらのしっぽの今後の課題や目標を教えてください。

震源地が目の前ということもあり、私たちの経験を発信していきたいと思っています。くじらのしっぽとしては、牡鹿半島唯一の障害者福祉事業所でもあるので、利用者さんが安心して働き、楽しく過ごせる事業所を目指したいと思っています。その結果、地域産業の担い手になれればと思っています。

 

いま必要なものは何ですか?

ここは石巻市の中心部まで1時間かかるような地理的制約のある地なので、流通の部分で不便を感じることがあります。その問題をクリアできれば、販売促進や商品の開発につながるのではと思っています。

 

ホームページを活用して受注につなげていらっしゃるようですが、今後も力を入れていくのですか?

これは本当に大きな存在で、ホームページを通して定期的に商品を購入して下さる方がいらっしゃいます。お顔は分からないのですが、お電話をいただく度に昔からの知り合いのようにお話をして下さいます。特に「塩蔵わかめ」を気に入っていただいているので、絶対に切らせないし、商品に嘘があってはいけないと思っています。

 

全国のみなさんにアピールしたい事はありますか?

震災から8年が経過しましたが(※2)、いま一番怖いのが震災記憶の風化です。障害をお持ちの方たちが震災で不安な日々を過ごしたのは間違いありません。この震災の記憶を風化させないで欲しいのが一番の願いです。

 

くじらのしっぽの皆さん 

※1:くじらのしっぽは保険福祉センター清優館の中にあります。

※2:取材日は2019年2月。

 

 

小川絢子さんのいま

小川絢子さんに近況について伺いました。

小川絢子さん

小川絢子さん

 

一人暮らしを始めたそうですね?

はい。くじらのしっぽから車で10分くらいのところに住んでいます。一人暮らしを始めて1年ちょっとになります。

 

生活はどうですか?

お店が少ないので買い物は少々不便ですが、静かなところなので住み心地はいいですね。

 

食事はどうしているのですか?

自炊していますが、週2回来てくれるヘルパーさんにも作ってもらっています。

 

得意料理は何ですか?

野菜スープやチャーハンです。

 

ご近所とのお付き合いはありますか?

仲の良いおばさんがいて、地域のお祭りなどがあると誘ってくれます。

 

一人暮らしで楽しいことは何ですか?

基本、時間は自由に使えるので、作品展に出品する作品作りに没頭したりしています。

 

今住んでいる地区は避難訓練はありますか?

1年で2回くらいあります。地震と津波の避難訓練です。

 

避難場所は把握していますか?

家の近くに公民館があるのですが、そこが避難場所になっています。歩いて1分もかかりません。

 

何かあった時、小川さんに声を掛けてくれる人はいますか?

います。

 

その方とは普段どのようにコミュニケーションをとっていますか?

地区の方は普段あまり外には出ないんですが、会った時は挨拶するようにしています。

 

最後に小川さんがすすめるくじらのしっぽの商品は何ですか?

最近できた「かき飴」や、「金華塩」、「バジル塩」などですね。塩はみんなで一生懸命ゴミ取りをして作りました。ここの塩はちょっと甘みがあっておにぎりとかにも合うんです。おいしいですよ。

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